
10年続いたカフェが閉店した理由を考察

知人のカフェが10年間の営業を経て閉店しました。
お店は小規模で店主である彼とバイトさんで運営。
コーヒーの他にフードも提供。
駐車場はありますが決して多いと言うわけではありません。
そのお店の独自性として自家製料理に力を入れていました。
10年間生き残れる飲食店の割合は1割と言われています。
その1割に入っていたのに閉店してしまった。
どこに原因があったのか?
失敗事例から見えてくる課題や学びもあります。
僕の偏見と推論ですが、少し考えていきましょう。
カフェの特徴

カフェ経営の特徴として。
- 客単価が低い(数字を上げるなら多くのお客様を対応する必要性がある)
- 滞在時間が長い(席が空かなければ新規のお客様をお迎えできない)
- 営業時間も長い(人件費がかかる)
というのがあります。
飲食店の数字というのはシンプルに〝客単価✕客数〟になります。
この数式で考えると、客単価が低く、滞在時間が長いという時点で経営が簡単ではないことがわかります。
滞在時間が長いと駐車場が空かないので、その時点で素通りする方もいる(機会損失)
では駐車場を広くすると管理コストが上がる。
客単価が低いなかで回転率が上がらないと、数字を上げることができない。
ではどのように戦えばいいのか。
カフェ経営の戦略

カフェの戦い方もさまざまありますが、あくまで個人店目線で考えます。
- コーヒー豆の販売(ネット販売もできればよりいい)
- コーヒーの持ち帰り
- 付加価値のあるフード提供
- デザートの提供
- 焼き菓子の提供(持ち帰り用)
- 席の時間制限を設ける(賛否あります)
- 調理のオペレーションを詰めておく
これらの施策というのはすべて単価アップと、お客様満足度を上げることが目的です。
コーヒー豆や焼き菓子などは、店内以外でも売ることができる飛び道具になるので、これができるだけで大きな武器になります。
オペレーションに関してですが、カフェ経営は参入障壁がかなり低いです。
なぜなら、調理経験が少なくても、比較的低コストで開業できてしまうからです。
見方を変えれば、調理経験が少ない=段取りが悪いとも言えます。
もちろんそうでない方もいます。
それ故に、提供に時間がかかる=さらに滞在時間が長くなる、ということに繋がります。
話は変わりますが、スタバは「店内でゆっくりお過ごしください」と公にうたっています。
これができるのは、ドライブスルーや持ち帰りで脅威の提供スピードを実現しているからこそ。
大手だからこそ成せる技で、あの〝ぶん回しシステム〟はすごいです。
彼のこだわりが生んだ〝矛盾〟

彼のお店には、自家製料理を前面に打ち出したメニューがありました。
僕も食べる前はとても楽しみにしていたのですが、実際には塩気がやや弱く、どこか物足りなさを感じてしまいました。
塩加減が味の決め手となる料理だったので、もしかすると意図的にあっさり仕上げたのかもしれません。
でも、だからこそ余計に感じたのは、「もっと詰めておくべきだったのでは?」ということ。
期待感の高い料理を提供するなら、細部までしっかりと作り込んでおく必要があると思います。
彼は当時、「客単価と回転率を上げたい。でも、お客様にはゆっくり過ごしていただきたい」と話していました。
その「ゆっくり過ごしていただきたい」という思いには、彼の優しさが表れていたと思います。
だけど、彼の発言には明らかな矛盾がありました。
飲食店を経営していく上で本当に大切なのは「お客様の満足」と同時に“お店が存続できるだけの利益をしっかり追求すること”です。
「ゆっくり過ごしてもらいたい」という気持ちはよく分かります。
でも、その結果として客単価1,000円前後で、2〜3時間も席を占有されてしまって本当に良いのでしょうか?
お客様にとって心地よい空間を提供するのは大切ですが、お店としても“持続可能な経営”を考えなければなりません。
状況によっては、長時間の滞在によって次のお客様をお迎えできないケースもあります。
それが積み重なれば、本来得られたはずの利益を逃し、売上が伸び悩み、最悪の場合は閉店に追い込まれることも。
もちろん、閉店の理由は一つではなく、さまざまな要因が絡んでいるでしょう。
けれどもし、当時「価格を見直す」「時間制限を設ける」などの対策を講じていたら──
もう少し違った未来があったかもしれません。
経営者は、さまざまな場面で決断をしていかねばなりません。
中途半端な対策は、かえって経営を不安定にさせてしまうリスクがあります。
数字が取れている状態なら〝感情と実利〟のどちらを取るのか選択ができますが、そうでないなら感情よりも実利を取らなきゃならないときもあります。
一旦は実利を優先して、安定してきてから感情を取ることもできます。
そこから学べる4つの教訓
さて、今回の10年続いたカフェが閉店したのは残念なことですが、ここから学べることがあります。
- 客単価と回転率のバランスを常に意識する
- 思いやりだけでは経営は成り立たない。優先順位の明確化が重要
- 「中途半端」は最大のリスク
- 10年続いても、それはゴールではなく通過点
世の中の経営者は、さまざまな成功と失敗を繰り返しています。
リスクを負って開業しているからには存続させたい、走り続けたいというのは誰しも思うことです。
他者の経験を〝他山の石〟とせず、自分ごととして分析することで、自身の学びに変えることも大事なことです。