
本当にやりたいことですか?
飲食店経営をするなら多店舗展開をしたい!という方は多いと思います。
それは本当にやりたいことですか?
多店舗展開には、その先にあるリスクも伴います。
その覚悟はありますか?
一店舗経営には一店舗経営の大変さがあり、多店舗展開には多店舗展開の大変さがあります。
飲食店には飲食店の数だけ戦い方があり、飲食店の数だけそれぞれ店主の価値観があります。
どちらが良い悪いではありません。
多店舗展開するにも、より多くのお客様に自分の料理を届けたい、海外で挑戦したい、たくさんの従業員を抱えみんなで進んでいきたい、関わる人の人生をより良くしたい、とにかくお金を稼ぎたいなどの明確な意思があるならやるべきです。
しかし経営者の中には多店舗展開向きオーナータイプではなく、一店舗向き職人タイプの方もいます。
自分の目の届く範囲のお客様に料理を届け一店舗を磨き上げたい。自分が一線で活躍したい。一店舗だけでも関わっくれるスタッフを大切に歩んでいきたい。そのうえで自分たちの暮らしも豊かにし、お金に困らないストレスフリーな人生を手に入れたい。 ←(これは僕の価値観)
僕の価値観はあくまで一例ですが、このように価値観は人それぞれです。
自分の軸をしっかり持ちましょう。
多店舗展開への幻想

周囲を見ていると「本当に多店舗展開をしたいのか?」「多店舗展開のリスクを負う覚悟があるのか?」「多くの業務に向き合えるだけのモチベーションがあるのか?」と疑問に思うことがあります。
やってみなければわからないことも多々ありますが、多店舗展開の良いところだけを見て幻想をいだいているだけの人も少なくありません。
まずは『己を知る』『足るを知る』ことが重要です。
多店舗展開を否定するわけではありません。
常に挑戦し続けている方々は尊敬しています。
しかし、飲食店経営において多店舗展開が全てではありません。
一店舗目が起動に乗り出すと周囲から持ち上げられて、2店舗目の構想が頭を過ぎります。
しかし周りの持ち上げてくる人はどんな方たちでしょうか。
銀行さんであったりお世話になった建築会社などではないでしょうか。
自分がさらなるリスクを負って潤うのは、お金を借りてくれて建築の仕事を請け負う彼らです。
当たり前ですが失敗して借金を抱えるのは他ならぬ店主である自分です。
周囲の声の真意がどこにあるのか自分の軸をしっかり持ち、周囲の言葉を注意深く聞く必要があります。
情報の偏りと錯覚

現代はスマホが普及して、情報を取りにいくことが容易になりました。
僕も税金や資産運用、経営者としてのマインドをどう持つべきなのか、その他雑学を学ばせてもらっています。
YouTubeやSNSで飲食店のリアルな数字や店舗経営に関する情報も活発に投稿されおり情報に事欠きません。
しかしそうした情報の多くは多店舗展開を推奨するものが多く、結果として「多店舗展開しないと一人前じゃない」と錯覚してしまう人も少なくないのではないでしょうか?
数字を出している発信者のなかで一店舗あたりの数字が大きいお店もあります。
そういったケースは人口の多い都会であったり、営業時間がお昼から夜までの通し営業であったり、定休日のないお店だったりします。
その場合だと個人店の数字と比較できないので参考にしても注意が必要です。
上手くシフトを回していると思いますが、人口減少による人手不足と労基が厳しい時代にどうやって対応しているのか、長期で考えたときに経営は持続できるのか疑問もあります。
一店舗経営でしっかりお金を稼げるのか?

結論から言うと、稼げます。
FLRコストをコントロールし、信頼を積み上げ、新規顧客の開拓を怠らず、客数を増やす努力をすれば一店舗経営でも十分に収益を上げることは可能です。
ただし、一店舗経営だと爆発力はないので短期での成長は考えず、中期で考える必要があります。
僕の場合は開業から少しづつ右肩上がりの業績でしたが、気持ちに余裕ができたのは最初の借り入れの返済が終わった7年目の頃でした。
一店舗経営ですが、現在では営業時間を減らして休みを増やし、自分たちの余暇も楽しめるようになり、老後の資金の不安もなく、生活も心も豊かに過ごしています。
これも10数年間の積み上げの結果といえます。
雇われのままだったら今のような生活を手に入れることはできていないでしょう。
とは言え安泰なんてない時代。
いつどこで足を落とすかわかりません。
常に自分を律してシビアに向き合うことと、自分が腐らない限りは存続できる確信があります。
中途半端な店舗展開は危険

どんな形であれ経営者になるには課題とリスクは付きものです。
ただし、一店舗経営と多店舗展開では課題とリスクの質と幅が大きく異なります。
お店のジャンルにもよりますが、一店舗なら社員さんを雇うことも少ないので気楽ですし、できることも限られるので、数字を上げるには限界があります。
多店舗展開なら社員さんをたくさん雇うのでその分の責任が重くのしかかりますが、できることは圧倒的に増えるので数字の上げ方は一店舗の比ではありません。
ただ気をつけてほしいのは2〜3店舗増やしてもスケールメリットは少ないので、中途半端に店舗を増やすくらいなら一店舗のままがいいです。
理由は以下の通り
- 大手ほど仕入れコスト削減の恩恵がない。
- 中途半端な規模で、マネジメントの負担が増える(自分の目が届きにくくなる)。
- 利益率の改善よりも、管理コストの増加のほうが大きくなるリスクがある。
すべてのコストが上がっていることと、労基も厳しくなっているので資本力がないなら中途半端な展開は気をつけましょう。
知り合いの洋食さんで「3店舗まで増やさないと成り立たない」と言ってました。
厳しい言い方かもしれませんが、一店舗もまともに成り立たせられないなら2〜3店舗も拡大しないほうがいいです。
店舗を増やすことよりも、足元のお店の課題解決をして地盤をしっかりと築き上げることのほうが先決です。
自分のレールは自分で敷く

常に挑戦し、多くの方に自分のブランドを楽しんでいただく多店舗展開も素晴らしいですし、一店舗だけでも地域の方に愛され続けるお店作りも素晴らしいです。
優劣をつけるものではありませんし正解もありません。
自分、またはパートナーとどのような人生を歩んでいきたいかはそれぞれの自由。
それを実現するために己を知り、方向性をしっかり決めましょう。