何にお金を使うかで、人の軸が見えてくる

お金の使い方には、その人の価値観が表れます。
経営者の中には「いい車を買うことが自分へのご褒美だ」という人もいれば、
僕のように「お店を整えることにお金を使いたい」というタイプもいます。
どちらが正しいわけではありません。
車に興味がない経営者の考え方
飲食店の経営者には、車が好きな人が一定数います。
いい車を買うことで仕事のモチベーションが上がるなら、それは素晴らしいことです。
お金の使い方は、その人の生き方そのものでもあります。
ただ、僕は少し違う考えを持っています。
車にはあまり興味がなく、200万円以下の車で十分という感覚。
今の車も中古で購入した100万円ほどのもので、長く大切に乗っています。
もちろん、高級車を否定するつもりはありません。
でも僕にとっては、車に使うお金があるなら、それをお店に使いたい。
厨房のメンテナンスや外壁の補修、器の入れ替えなど、
そういった部分を整えるほうが、結果的にお客様に還元できると思っています。
「お店を整える」という投資

以前、設備と増築のために数百万円の借り入れをしました。
借入先は小規模企業共済。いわば、自分たちの老後資金を一時的に使わせてもらったようなものです。
そのときに行ったのは、
- 待合席の増築(お客様のストレス軽減)
- 駐車場の台数を増やす整備
- 厨房の拡充と洗い場の効率化
- 外壁の補修
いずれも、開業当初から「いつか改善したい」と思っていた部分でした。
それらを整えたことで、ようやく**“お店が完成した”という感慨**がありました。
新しくなった厨房は作業の流れがスムーズになり、
日々の仕事に小さな余裕が生まれました。
お客様にとっても、スタッフにとっても心地よい空間になり、
**「お店を整えるお金」は、“働く人・来る人の双方を整えるお金”**だと実感しています。
「使い方」に価値観が出る

知り合いに、車に1000万円以上かける人がいます。
それが本人のモチベーションになっているなら、何も悪くありません。
ただ僕なら、200万円の車にして、残りをメンテナンスやインデックス投資に回すと思います。
その知人は、最近「老後資金が不安だ」と言っていました。
それだけ使っていれば、たしかに心配にもなりますよね。
でも、これは人それぞれ。
僕にとっては、“見えない安心”にお金を使うことが一番しっくりきます。
高級車への憧れが消えていった理由

正直に言うと、昔は「いつかはいい車に」と思った時期もありました。
でもそのたびに、
「自己満足にお金をかけても仕方がない」
「人は自分の車なんて、意外と見ていない」
そう思い直してきました。
観客を必要とするような満足より、
自分たちの生活とお店が整っていることのほうが、ずっと豊かだと感じています。
それに、高級車を必要としなければ、損益分岐点も下がります。
経営が安定しやすくなり、結果的に営業時間を短くしても無理なく回せる。
空いた時間で家族と過ごしたり、旅行に出かけたり──
「余白」を楽しむことができるようになりました。
利益を「再投資しない」という選択

ビジネスの世界ではよく、
「利益は次の投資に回せ」と言われます。
でもそれは、拡大を前提とした経営における正論です。
僕のように質を高めることを目的とした経営では、
利益を積み増すより、“いまの環境を健やかに保つ”ほうが重要です。
必要なところにだけお金を使い、
無理に増やさず、整える。
それが、僕にとっての「持続可能な経営」です。
お金の使い方に出る「経営者の軸」

経営をしていると、「お金の使い方」にはその人の軸が如実に出ます。
車でも、時計でも、趣味でもいい。
大切なのは、それが**“自分を整えるお金の使い方”になっているか**どうか。
僕にとっては、それが「お店を整えること」。
だから、お店が整えば自然と自分の心も整います。
結局のところ、僕にとっての贅沢は、
「気持ちよく働けるお店」なんだと思います。
お金の使い方がその人の生き方

お金の使い方には、その人の生き方が出ます。
派手に見せるために使うお金もあれば、
静かに積み重ねるために使うお金もある。
僕は後者のほうが性に合っている。
店を整えることが、自分の心を整えることになる。
それが、僕にとっての経営者としての幸福です。
