“値下げ”より“信頼”で積み上げる商いを

“値下げ”より“信頼”で積み上げる商いを

値下げしたほうがいいのかな?と思ったら

飲食店をやっていれば、売上が安定しない日は必ずあります。
そんなとき、「飽きられたのかな」「価格が見合っていないのかも」と不安になるのは、ごく自然なことです。

そこで浮かぶのが、〝値下げしたほうがいいのかも〟という考え。
でも、その判断——ちょっと待ってください。

本当に価格の問題でしょうか?
売上の波は、季節や天候、社会情勢など外的要因も大きく影響します。
安定し続けるほうが珍しい。それが現実です。

値下げが“安易な沼”になってしまう理由

値下げは、一度やると抜け出すのが難しい施策です。
気持ちが揺れているときこそ、冷静な判断が必要です。

なぜなら、値下げによって一時的に客足が戻ったとしても、
元の価格に戻せなくなる”ことが多いからです。

「安くできるなら、それだけの価値なのかも」
「この価格じゃないと、行く理由がない」
そんな印象を持たれてしまうと、本来のお店の魅力が薄れてしまいます。

大手と個人店は、戦い方が違う

大手の飲食チェーンが、キャンペーンや値下げで集客するのはよくあること。
でも、それができるのは、あくまで資本力とスケールがあるからです。

個人店の強みは、そこにはありません。
大量生産ではできない手間や工夫、
そしてお客様との距離感が近いことこそが、僕たちの武器です。

安易に値段を下げてしまえば、
「この店なら、もう少し高くても行きたい」という価値を自ら壊してしまうことになります。

値下げによって失われるもの

値下げをすれば、いつもの売上に戻せるかもしれない。
でも、その裏で現場は確実に疲弊します。

より多くの料理を作り、仕込みを増やし、
それでも利益は薄くなる。
そんな状況が続けば、質を落とさずに営業するのは難しくなります。

そして、値下げをきっかけに来たお客様が、
次も来てくれる保証はありません。

値下げは、数字だけを追った施策です。
でも、個人店が向き合うべきなのは「数字」ではなく、「」だと思うのです。

「非日常」こそが、信頼と売上をつくる

では、どうやって値下げせずに売上を上げていくか。
その鍵は、「一手間かけて、付加価値をつけること」です。

外食の魅力のひとつは、“非日常を味わうこと”。
家庭では再現しづらい料理、手に入りにくい食材。
そういったものがあるだけで、「行く理由」になります。

その積み重ねが、お客様からの信頼につながります。

もちろん、即効性はありません。
時間がかかりますし、地味な努力の連続です。
だからこそ、普段から意識して続けていくしかありません。

戦略的な値下げは“静かにやる”

僕のお店でも、まったく値下げをしないわけではありません。
ただし、それは“戦略的な値下げ”です。

たとえば、その日に余りそうな食材がある場合。
ロスになるくらいなら、少し価格を下げてでもお客様に食べてもらいたい。

でも、SNSや張り紙で「値下げします!」とは言いません。
通常メニューの価格は守りながら、
一品料理のなかで自然な価格調整をする——
それが、無理なくできる範囲の値下げの仕方だと思っています。

信頼は一日にして成らず

売上が振るわないとき、料理の質を疑ってみることも大切です。
自分の感覚に頼りすぎていないか、
一方的な押しつけになっていないか。
一歩引いて見つめ直す時間も、必要です。

個人店の強みは、付加価値をつけられること。
そのための一手間が何なのか。
そして、何がお客様の満足につながるのか。
それを常に問い続けること。

信頼は一日にして成らず
だからこそ、焦らず、ぶれず、冷静に。

店を守る判断ができるのは、店主であるあなた自身です。