値上げは悪なのか? 価格改定の末路

値上げは悪なのか? 価格改定の末路

値上げの正しい向き合い方

どう決断すべきか? 生き残るための戦略とは

2020年以降、物価の上昇が続いています。食材費、人件費、物流コスト、エネルギー費用など、飲食店経営に直結するコストが軒並み上がっています。

食材費の値上げ率は、これまでは数%に留まっていましたが、今では二桁%が当たり前になっています。

とはいえ卸業者さんの負担を考えれば、個人店としても値上げを受け入れるしかありません。

業者さんが潰れてしまうと僕らも困るのです。大切なのは、お互いがWin-Winな関係を築くこと。

スタッフにも同じことが言えます。

適正な給与を支払い、持続可能な労働環境を作ることは、長期的に見てお店の利益につながります。

そこで僕ら飲食店が今すぐにしなきゃいけないのは値上げを適切に価格へ転嫁する」ことです。

値上げの不安をどう乗り越えるか

値上げに対する不安や申し訳ない気持ちは良く解りますが、お店を維持し運営していくためには、僕らお店側もしっかり利益を確保することが必要です。

お店が存続することで、お客様に価値を提供し続けられます

自己犠牲の上に成り立つお店では、経営者や従業員の生活が苦しくなり、本末転倒です。

値上げはイタチごっこ?

日々の食材費の値上げに対応するのは難しく、実際には後追いで価格を調整する形になります。

たとえば、値上げを決めた直後に別の食材が値上がりし、「先日値上げしたばかりなのに…」という状況に陥ることも。

僕のお店でも前年比の売上が上がっていたにも関わらず、食材費の高騰で利益が減少していたため、すぐに価格を見直したことがあります。

このように、値上げは後出しジャンケンになりがちです。

それでも「必要な値上げは避けてはいけない」 のです。

適正な値上げの計算方法

基本的な値上げ幅の目安として 「上がった食材費×3」 という考え方があります。

たとえば、1000円で提供しているメニューの食材費が20円上がった場合、20円×3=60円 を上乗せし、1060円で提供する形です。

これはあくまで指標であり、業態や店主の考え方によって調整が必要です。

ステルス値上げはやっちゃだめ

価格を据え置く代わりに、ポーションを小さくする「ステルス値上げ」はやるべきではありません。

ラーメン屋で麺の量が10g減っていたとしても、常連客にはすぐに気づかれます。お客様の信頼を裏切る形になるため、正直に値上げをする方が結果的にプラスに働きます。

デフレ時代には通用したかもしれませんが、今は 「価格が上がってもしっかりしたものを食べたい」 というニーズがあります。特に個人店は、大手にはできない価値提供をすることで勝負すべきです。

『強者には強者の戦い方があり、弱者には弱者の戦い方がある』

これはランチェスター戦略に基づく考え方ですが、個人店は大手と同じ土俵では戦えません。

だからこそ、 信頼を築くために正直な価格設定をすることが重要 なのです。

「例外」もあるがそれは大手の戦略

値上げせずに業績を上げている企業の例もあります。

それは 「サイゼリヤ」 です。

サイゼリヤは大手であり、社長は理系出身。

徹底した合理化数値管理によって、価格を抑える戦略をとっています。

ただし、これは 「大手だからこそできる戦略」 であり、私たち個人店がそのまま真似できるものではありません。

値上げを先送りにすると苦しくなる

仮に、2020年から毎年5%ずつ値上げをしていた A店 と、2024年に初めて値上げを決断した B店 を比べてみます。

A店の値上げ戦略:2020年から3年間、1年に1回 5%の値上げをし、3年間で計15%の値上げ。

  • 2020年:+5%
  • 2021年:+5%(累計10%)
  • 2022年:+5%(累計15%)

段階的に対応できているA店はその後の2024年にさらなる物価高騰があっても対応しやすいです。

B店の値上げの戦略:2020年から2023年までは値上げせずに踏ん張って2024年に一気に15%の値上げ

  • 2020年〜2023年:値上げなし
  • 2024年:急に+15%の値上げ

B店の店主は2024年に15%の値上げができるでしょうか? 

15%という数字はお客様に大きなインパクトを与えるので、そこまでの値上げはしにくいです。

しかし2024年になっても物価高騰が収まらない場合、対応が難しくなるのは明らかです。

このように 値上げを後回しにすると、結果的に大きな負担がのしかかる ことになり疲弊していきます。

また、一気に値上げをするとお客様の反応や心理的負担が大きいです。その反応は大きく現れます。

一生懸命下積みをし、念願のお店を出したのに、こんなことでお店を潰すわけにはいきません。

値上げは先を見据えた課題の一つです。

値上げ後の客数を意識する

値上げは必要ですが、

値上げ後に気をつけるべきポイントは『お客様の満足度が下がっていないか』『客数が減っていないか』です。

個人店では、値上げの影響がすぐに出るわけではなく、中長期で様子を見る必要があります。

値上げがすぐに知れ渡るわけではありませんからね。

  • 値上げ後も客数が減らなければ、価格が受け入れられた証拠。
  • もし客数が減るようであれば、何らかの対策が必要。

値上げに負けない価値提供をできるよう、仕込みに一手間を加えたり、質を上げる努力をすることでお店の信頼向上に繋がり、自分自身の糧となります。

企業努力は都合の良い言葉?

「企業努力をするべきだ」と言われることがありますが、

企業努力とは「利益を削って消費者に還元しろ」という意味ではありません。

使う側によって捉え方が違ってきますが、

企業側から言うと「私たちは利益を削らず仕入れや人件費を削って価格を据え置いてます」となり、

消費者から言うと「あなた達(企業)は利益を削って価格を据え置いて」となることが多いです。

勝手ですよね。

企業なら出来る努力でも個人ではできない努力もあります。

本当に必要なのは、

  • より良い食材の仕入れ
  • 効率的なオペレーション
  • 付加価値の向上
  • お客様の満足度を高める工夫

といった 「持続可能な企業努力」 です。

謙虚に向き合っているならば、そのような言葉に翻弄されないようにしましょう。

私の店の値上げの実例

私のお店では2020年以前から定期的に値上げを行っていましたが、初めは一部のメニューのみ段階的に価格を調整していました。

高価格帯の値上げをして次の段階で低価格帯の値上げをするといった具合に。

2020年以降は 全体的な値上げ を実施し、数年間で トータル15%の価格改定 をしました。

しかし、客数は減らず、お客様から値上げについて指摘されることもありません。

本当にありがたいことです。

これは、

  • 専門性の高いお店であること
  • 価格以上の価値を提供できていること

が大きな要因だと考えています。

もちろん、今後も簡単に値上げできるわけではありません。

値上げするたびに常に不安な気持ちになります。

だからこそ 慎重に、しかし必要な値上げを恐れない姿勢 が大切なのです。

まとめ

✅ 値上げは避けられないが、適正な価格設定を心がける

✅ ステルス値上げはせず、誠実な価格転嫁を

✅ 値上げの影響を中長期で観察し、価値提供を強化する

値上げはお店を守り、お客様へより良いサービスを提供し続けるための大切な決断です。

お客様のため、スタッフのため、お店のために適切な値上げをしていきましょう。