コロナが教えてくれた、余暇時間の大切さ

僕は「飲食店はこうであるべきだ」という固定観念……いや、刷り込みのようなものが、かなり強い方だと思います。
長時間労働は当たり前。家族との時間も犠牲にするのが当然。
連休を取ってはお客様に迷惑がかかるし、定休日は週1日で十分。
ずっとそう思ってきました。
でも実際はどうでしょうか?
週1回の定休日といっても、その日は買い出しや仕込みで終わってしまう。
最近ではSNSを活用した広報や発信も、店主自らが行う必要があります。
そこに私用も入ってくると、「休み」とは名ばかりで、ゆっくり過ごすことなんてほとんどできません。
仕事は好きです。やりがいもある。
でも、仕事だけで人生が終わることは望んでいません。
仕事も、趣味も、家族との時間も、全部大切にしたい。
そんな思いから、約1年前に思い切って週休二日制を導入しました。
週休二日にして、売上はどうなったのか?

飲食店経営者であれば、ここが一番気になるところかもしれません。
結論から言うと、売上は大きく変わっていません。
むしろ、お店の認知が広がったこともあって、客単価は以前より上がっています。
また、営業日を絞ったことでお客様の来店が特定の曜日に集中し、生産効率も上がりました。
週休二日は、10年以上経営してからの選択だったので、それまでの積み重ねがあったからこそ可能になった面もあります。
はじめからできることではありませんが、一定の土台があれば現実的な選択肢だと実感しています。
人生の充実度が上がった

休みが増えたことで、それまで先延ばしにしていたことや、諦めていた過ごし方ができるようになりました。
週休二日のうち、一日は買い出しと仕込み。
もう一日は、完全なフリーの日にしています。
この「1日フリー」が生まれたことで、こんなことができるようになりました:
- 勉強も兼ねた外食(雑談による情報交換)
- 妻とのショッピングや遠出
- 予約が必要な施設やサービスの利用
- 趣味の時間をしっかり取る
- 自分の健康と向き合う時間を持つ
一言でいえば、「リフレッシュするという感覚を、ようやく知った」ような感覚です。
精神的にも余裕ができ、仕事への集中力も増しました。
「みんなが休めば、誰かが動く」

最近では、週休二日を導入する飲食店も増えてきました。
でも、まだまだ少数派です。
極端な話ですが、もしすべての飲食店が週休二日を導入したとしても、業界は成り立つのではないか——そう思うことがあります。
なぜなら、休みが増えれば「ランチ難民」が生まれます。
そうなれば、他のお店に人が流れます。
普段行かないエリアに足を運ぶ人もいるでしょうし、「たまたま空いていた店」が新たなお気に入りになることもあるかもしれません。
結果的に、お互いの認知が広まり、リピーターの入口にもなります。
僕自身も、お目当ての店が休みで別のお店に行った経験は何度もあります。
そのとき、わざわざ馴染みの店まで戻る、なんてことはほとんどありません。
その場で“代わり”を探す。
つまり、休むことは“機会損失”ばかりではない、ということです。
週休二日を決断できた理由

この選択ができたのは、やはりコロナを経験したからです。
感染拡大で営業を制限され、強制的に「休む」ことを経験した。
その時間の中で、これまであまりにも“仕事一辺倒”だった自分に気づいたのです。
若い頃から、店を持つことを目標に突き進み、ようやく実現できた自分の店。
一生懸命やって、軌道にも乗った。だけど振り返ってみたら、子どもと過ごす時間や、妻とのゆっくりした時間、自分自身の時間が極端に少なかった。
仕事の思い出は濃い。でも、生活の思い出は、薄い霧のようだった——
このままでは、いったい何のために働いているのか分からなくなる。
そう感じたときに、ようやく「余暇時間も楽しむ人生にしたい」と思い至りました。
もちろん、最初からそういう選択はできません。
“やるべき時期にやるべきことをやってきた”という積み重ねがあるからこそ、今の選択ができたと思っています。
まとめ

週休二日は、経営に余白を生み、人生に彩りを取り戻してくれました。
仕事だけでなく、生活や人間関係、自分自身のコンディションまでが整っていく。
飲食店経営にとって「休むこと」は、リスクではなく戦略かもしれません。
休むことを恐れず、休みの価値をもう一度考えてみる。そんなきっかけになれば嬉しいです。
